• Instagram
  • TOPへTOPへ

    閉塞性動脈硬化症

    閉塞性動脈硬化症とは

    閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化によって動脈が狭まったり(狭窄)、完全に塞がったり(閉塞)する状態です。動脈でしたらどこでも発生し得る病気でもありますが、脳の血管が狭くなったり塞がれたりすると、一過性脳虚血発作や脳梗塞を引き起こします。心臓の冠動脈が同じような状態に陥ると、狭心症や心筋梗塞が起こります。それと同様に、手足の動脈が狭くなったり塞がれたりすると栄養・酸素不足に陥り、手足の先が冷たくなったり労作後に足に疼痛が生じます。

    閉塞性動脈硬化症の進行・症状

    閉塞性動脈硬化症の進行は、フォンテイン分類により4つの段階に分けられます。I度が最も軽く、II度、III度と進むにつれて症状は深刻化し、IV度が最も重い状態とされます。

    フォンテインⅠ度

    足が痺れたり、冷たさを強く感じたりすることがある段階です。また、肌の色が青白くなることもありますが、これらは普段の生活でも起こり得るため、下肢閉塞性動脈硬化症を発症していることに気づかない方も少なくありません。

    フォンテインII

    特に「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」がみられます。これは歩行中に、足に痛みが起こり、休憩すると痛みが和らぐ現象です。この症状は下肢閉塞性動脈硬化症の他、整形外科疾患でもみられるので、誤診されるケースもあります。
    歩いた時にふくらはぎの張りを感じるという症状が典型的です。一方で整形外科的な原因で起こっている場合は、姿勢を変えた際にピリピリとした痺れが現れる傾向にあります。

    フォンテインIII

    安静時でも足の痛みが激しくなり、眠れなくなることもあります。また、足の色が黒ずみ、深爪や小さな傷がなかなか治らなくなります。

    フォンテインIV

    足指への血流が足りなくなり、つま先や足首の外側に、傷からのただれや潰瘍が生じてしまいます。症状が進むと壊疽(えそ)になり、最悪の場合、足の切断を余儀なくされることもあります。

    閉塞性動脈硬化症の検査

    ABI(Ankle Brachial Pressure Index)検査は、末梢動脈の血の流れを調べるために行われる検査です。足首と上腕の血圧を同時に測り、「足首÷上腕」で算出します。通常、足首の血圧は上腕よりも高くなりますが、低い場合は何らかの血流の問題が隠れている可能性が考えられます。ABI値が0.9~1.3なら正常、0.9以下では下肢動脈の狭窄や閉塞が疑われます。

    閉塞性動脈硬化症の治療

    薬物治療

    治療では薬物療法が中心に行われます。血管を広げて血流を促進し、血液凝固を防ぐことで症状の軽減と病気の進行防止を目指します。使用される主な薬は3つあり、抗血小板薬が最も広く用いられます。これらの薬は、症状や病状の重さなどに応じて単独または組み合わせて処方されます。足の血流改善のみならず、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症の予防にも期待できます。

    抗血小板薬

    血液を流動的に保つために、血小板の活動をコントロールする薬です。シロスタゾールが代表的で、これらは血栓形成や動脈硬化の進行を防ぐことに有効とされます。

    末梢血管拡張薬

    血管を広げて手足の血流を促進する薬です。PGE1製剤のアルプロスタジルアルファデクスなどがあります。

    抗凝固薬

    血小板による血液の凝固を妨げ、血栓の形成を防ぐための薬です。具体的な抗凝固薬としては、ヘパリンやワルファリンなどが挙げられます。

    バイパス手術

    バイパス手術は、損傷した血管を迂回するために別の血管(グラフト)を使って橋渡しをして血流を維持させる治療です。主に大腿動脈などの下肢動脈が20cm以上にわたって閉塞している時に、血管外科で実施されます。
    この手術では、人工血管や下肢の大伏在静脈(だいふくざいじょうみゃく)がグラフトとして利用され、脚の付け根または膝上部を5~8cm程度切開し、大伏在静脈を取り出して血流不全の部位の前後に繋げます。
    必要な場合は連携する医療機関を紹介します。

    カテーテル治療

    カテーテル治療は、下肢動脈の閉塞部位に細い管であるカテーテルを挿れて、金属製のメッシュ管(ステント)を展開して血流を復活させる手法です。
    具体的には、バルーン付きのステントをカテーテルの先端に装着し、脚の付け根や上腕動脈から導入していきます。カテーテルは下肢動脈内へ送られ、バルーンを膨らませてステントを狭窄部位で拡げ、適切な位置に固定します。処置後はカテーテルとバルーンを取り除きます。
    必要な場合は連携する医療機関を紹介します。

    閉塞性動脈硬化症と
    心筋梗塞

    典型的な症状は間欠性跛行ですが、それがなくても心筋梗塞のリスクは高くなります。
    日本循環器学会の「末梢閉塞性動脈疾患ガイドライン(2015年版)」によりますと、間欠性跛行がない患者様でも、5年間の生存率が健康な方より低いと報告されています。
    さらに、患者様の約30%が冠動脈疾患を持っています。閉塞性動脈硬化症は単なる下肢の問題ではなく、全身性の疾患であると認識しなくてはなりません。
    リスク因子が3つ以上ある50歳以上の男性や60歳以上の女性は、狭心症や心筋梗塞の発症リスクが高いため、特に注意しなくてはいけません。

    心筋梗塞

    閉塞性動脈硬化症は
    心臓リハビリテーションの
    対象疾患です

    診療報酬の算定において、心大血管リハビリテーションの対象とされています。
    「心臓リハビリ」と聞くと「心臓のみかな」と思われがちですが、実際には予防も同じぐらい重要視されます。